歌や音楽など芸術を通して、人々を導く役割を持って生まれた人がいます。
それらの人に共通していることは、年齢を超えた精神性、性別の境界を持たない両性性、そして好奇心と遊び心を持ちつつ、強い信念をも持ち合わせていること。
世界で唯一の被爆国『日本』という国で生まれたふたりのアーティスト、美輪明宏さんと藤井風さんについて、愛と真理の継承者という視点から、その存在の意味や未来について、アーカイブよろしく個人的な思いを綴ってみます。
美輪明宏さん
言わずと知れた芸能界の重鎮 美輪明宏さん。長崎で生まれ、原爆という人間の業(ごう:カルマ)によって造られた負の光を浴びながらも、90年以上生き続ける まさに生きる観世音菩薩。
幼い頃の裕福な暮らしから一転、家族を支えることを余儀なくされた境遇、ホームレスの経験など、多くの苦労を重ねてこられました。美輪さんの中性的な魅力も、昭和の時代には受け入れられず、蔑み虐げられたことも多かったようですが、だからこそより強く美しくなる原動力になったのかもしれません。
長く日本の芸能界で活躍してこられた美輪さんが、様々なメディアを通してわたしたちに説いてこられたのが『愛』と『真理』というものです。
愛とは?
美輪さんの説く『愛』とはこのようなものです。
- 相手の存在そのものを大切にする:表面的な好き嫌いや感情ではなく、相手の存在そのものを大切に思う気持ち
- 与える気持ち:「相手に幸せになってほしい」「何かしてあげたい」という「与える」気持ち
- 思いやりと包容力:相手を気遣い、思いやり、包み込むような感情
併用される言葉に『恋』がありますが、恋と愛の違いはこのようなものです。
- 恋:自分本位なもの「相手に自分を好きになってもらい、相手を独占したい」と願う気持ち
- 愛:相手本位なもの「相手の幸せのためなら何でもしてあげたい」と時には身を引くことも厭わない、相手を気遣い、思いやり、包み込むような感情
多くの場合まずは恋をして、そこから学び、愛へと育てていきます。年齢は関係ありません。いくつになっても学ぶことはできるし、本当の『愛』を理解すれば苦しむことはなくなり、心穏やかになります。
対象はパートナーに限りません。家族や友人など、目の前にいる人に『愛』を持って接してみましょう。
言うは易く行うは難し(いうはやすくおこなうはかたし)ですが、人間としてさらに成長するためには、日々実践するしかありません。
真理とは?
次に『真理』について。
- 永久不変であること:社会の価値観や常識のように一時的に変わるものではなく、時代や場所が変わっても変わらない普遍的なもの
- 人間としての本質:他人の価値観に左右されず冷静に自分自身を大切にすること、人への優しさ、他者の立場に立って考える想像力
この他にも、美輪さんが法華経の教えから得られたものを、分かりやすく現代語に直したものなどもあるようですが、わたしは無宗教なのでここでは割愛します。
このように『真理』とは、陰と陽、吉と凶、光と闇、生と死などのように、わたしたちが今存在している『宇宙の法則』のことです。
色形は違えどわたしたちは、地球上で生まれ死んでいく仲間です。ここから逃れることはできないからこそ自分自身を大切にし、同じように他者も大切にすることが真理を追求するということになります。
至極シンプルなことです。
余談ですが、わたしもかつて美輪さんのコンサートに何度か足を運んだことがあります。その時不思議な体験をしました。
開始前に会場でお香の香りが漂う『芳香現象』が起きたり、ラストシーンで、美輪さんの身体から天井・舞台下まで届くほどの巨大な金色のオーラが見えたりもしました。一緒に行った友人たちも芳香現象は体験しましたが、オーラについてはわたしだけが見えたものなので、真偽のほどは定かではありません。それでも、会場全体を包み込むような柔らかい空気でからだが溶けるような感覚になり、心身ともに癒された不思議な体験として記憶しています。
わたしが体験したことも、『愛』とか『真理』なんてものも目には見えません。そんなもの信じられるかと思う人もいるでしょう。それもひとつの信念です。
自分の体験からのみ学ぶか、それとも先人の教えをも学びとするかは、その人自身に委ねられています。
あなたはいかがですか?
継承者現る
観世音菩薩のような美輪さんも、今は肉体を持った ひとりの『人間』です。真理に従えば、その命も、わたしたちを含む生きとし生けるものすべてと同じく『永遠ではない』ということです。
美輪さんの体調不良が伝えられるたび「次に『愛』と『真理』を説く継承者は現れるだろうか?」と思いを巡らせていたところ、コロナ禍の救世主の如く現れたのが、藤井風さん。
彼の出現に「この人だ!」という根拠のない自信と希望が溢れました。
そして先日『愛』という意味を持つアルバム『Prema』のリリースによって、それが確信に変わりました。
藤井風さん
今や世界中の人が知るところとなった 藤井風さん。ここからは個人的な経緯も交え、未来への期待と希望を載せておきたいと思います。
きっかけ
2020年春。パンデミックということもあり、ステイホームのタイミングで資格取得を目指しYouTubeの学習動画を見ながら勉強していた時のことです。
おすすめ動画に流れてきたのは、少年が超絶テクニックでピアノを弾く動画でした。カメラ目線で はにかみながらニコッと笑うその笑顔は、少年というより いたずら好きなおじさん のようで衝撃を受けました。
その動画を観たい誘惑と闘いながらも(今見たら絶対受からない)と思い、欲望を制し勉強に集中しました。
試験合格後、晴れて動画を見たときの驚きは、最初に目にしたとき以上のものでした。そこで初めて藤井風という人物を認識し、すでにリリースされていた曲から彼の持つ世界観と精神性を知ることになったのです。意外だったのは、ビジュアルとは裏腹に彼の曲には、年齢相応の恋の歌や、成功への欲求を歌ったものが全くないことでした。
限りなく無欲で無私な次元の高い言葉を聴き、「美輪さんの次に『愛』と『真理』を説く継承者はこの人だ!」と希望が湧きました。
動画撮影と十字架
ライブ中に動画を撮影する行為は海外ではメジャーでしたが、日本ではまだ禁止されていたころ、風さんは時代に先駆けて「一曲だけOK」というルールを打ち出しました。その意図にあるのが『share:共有』の精神です。
わたしもそのライブに参加し、いざその時が来てスマホのカメラを向けました。でも、すぐに構えていたスマホを下ろしてしまいました。なぜなら、彼に向けられた数千人のカメラのレンズが、まるで銃口のように感じて怖くなったからです。さらには、それらを全身で受け止め歌い続ける風さんの姿が、十字架にかけられてもなお微笑んで受け入れたイエス・キリストに見えたからです。
この人はただものではない。
そしてこの先、もっと大切な使命を担っているに違いないと、その時感じました。
graceの絶望
コロナも落ち着いてきたころ
『grace(恵み、魂の解放・救済)』という曲がリリースされました。
わたしはこの曲を聴いた瞬間、
途方にくれてしまいました。
まるでお経や聖書のような曲だったからです。
こんな究極の真理を説いた歌を作ってしまって、この人はこの先どうなってしまうんだろうと…
「作曲後は『燃え尽き状態』だった」と伝えられたのはずいぶんあとになってからでしたが「伝えられる状態=前進」と受け止め、しばらく見守ることにしました。
Premaの確信
3年という長い歳月をかけ、満を持してリリースされたアルバムが『Prema』
サンスクリット語で『愛』を意味し、次のような内容です。
- 無条件の愛::見返りを求めない、条件付きでない愛
- 至高の愛::最も高次の、崇高な愛
- 慈悲の愛::生きとし生けるものすべてへの慈悲や、利他の精神
全ての曲で『愛』と『真理』が歌われており、これまで以上により明確に、信念を持って示されました。
風さん曰く、世界中の人と『share:共有』するためにも歌詞は母国語の日本語ではなく、世界の第一もしくは第二言語である『English:英語』である必要があったとのこと。当然、一部の人にしか分からないスラングのような崩した言い回しもしていません。中高の英語学習レベルでわかるシンプルな言葉で綴られています。
誰もがいつかどこかで聴いたことのあるリズムと曲調、そしてこれらを耳にした人が心地よくなる音域をあえて選んでいるようにさえ思います。
アーティスト藤井風を支える【チーム風】は、キリスト教で言うところの【十二使徒】さながら、彼の歌を世界中に届けるサポートをしています。
いつかマイケル・ジャクソンの「ヒール・ザ・ワールド(Heal the World)」や、ジョン・レノンの「イマジン(Imagine)」のように、世界中の人が手を繋ぎ口ずさめる歌を、後世に残してくれるのではないかと期待しています。
愛と真理の継承者
美輪明宏さん、藤井風さん。
ふたりの根底にある『愛』と『真理』は同じですが、生まれた時代も育った環境も違うので、それらを手に入れた行程は大きく異なります。
ふたりの違い
戦前戦後の日本を知る美輪さんは、常に世の中の価値観と闘ってきました。物質至上主義、男尊女卑、性別への偏見…大切なものは、時代が変わっても変化しないもの(真理)だということを、自身のパーソナリティと経験から確信したのではないでしょうか。そして “普通の人” には見えないもが見え、聞こえない声が聞こえたからこそ、無私のこころ(愛)で形のないものを敬い、祈ってこられたのだと思います。それらを尊いものとして、これまでわたしたちに伝えて来られました。
一方 風さんは、経済不況はあるものの戦争のない 平和な世に生まれました。両親と年の離れた兄姉のもと、無条件の愛(これぞ愛)をたっぷり注がれ育ったことで「自己肯定感の鑑(かがみ)」のような人格になりました。両親からの教育(真理)が今の彼の哲学を形作ったことは明らかです。親から全肯定された人は、自分を信じ愛することをためらいません。
逆境のもと、経験と悟りによって『愛』と『真理』を実践してきた美輪さんと、豊かな環境で、教育によってその礎(いしづえ)を身に付けられた風さん。
人間を学んでいる途中のまだ若い天使 風さんが、美輪さんの領域に辿り着くのはもう少し先になるかもしれませんが、多くの人に支えられ、彼にしかできない役割を果たす日が来ると信じて 待とうと思います。
日本に生まれた意味
日本が今、実はかなり深刻な状態になっていることは、誰もが感じていることだと思います。
国会も経済も不安定。人口も減少し、外国人の労働力やインバウンドの外資に頼らざるを得ない状態が続いています。
水源を含む国土が外国籍の人の手に渡っていることも、あまり危機感を持って伝えられていません。そのうちリゾート地は「外国」になるかもしれません。自給率の低い日本が自国の土地を失えば、リアルな食料危機も目の前です。
そして何より、世界中が今戦争へと動き出しています。80年前の悲劇が、また地球上のどこかで起こるかもしれません。それは、日本でないとも限らないことは、核保有国の射程範囲に日本が入っていることからも容易に想像ができます。
長崎で被爆した美輪明宏さんと、広島の隣県岡山で生まれた藤井風さんが今、日本に存在している意味はここにあるのではないでしょうか。世界で唯一核兵器で傷付いた国に生まれたからこそ、説得力を持って平和を訴え、先導できる存在になり得るのではないかと思います。
毎日お経を唱え、祈りを捧げている美輪さんに継ぎ、世界の共通言語を駆使して歌で世界をひとつにすることができるのは、風さんしかいないのではないでしょうか。
あたたかくポジティブな言葉を共有し、一緒に歌い、相手を思いやることで、平和的な行動へと繋がっていくはずです。
日本が同じ轍(わだち)を踏んではいけません。
注)無党派です悪しからず
まとめ
美輪明宏さんと藤井風さん。
愛と真理の継承者という視点から、被爆国日本に生まれた意味や未来について、アーカイブ的に私見を綴ってみました。
おふたりが対面する日が来るかはわかりませんが、そうであってもなくても関係のないことでしょう。会う会わないの次元ではなく、きっと通じ合うものがあるはずですから。
今年は戦後80年。本格的な風の時代を迎えた2025年というタイミングで、今起きていることすべてが必然なのだと思います。
今この時代のこの国に生まれたご縁はかけがえのないものです。過去の犠牲を無駄にしないためにも毎日を精一杯生き、目の前にいる人を大切にしながら豊かな人生にしていきましょう。
なぜか「今残しておかなければ」という思いに駆り立てられ5000字を超えてしまいましたが、ここまでお読みくださった方、お付き合いありがとうございました。