アイデンティティ~心理学を子どもたちに~

アイデンティティとは?

言葉の生みの親

アイデンティティ』という言葉(概念)は、ドイツ生まれの精神分析家『 エリクソン(Erikson,E.H)』 が提唱しました。

のちにアメリカに移住し、ほんの30年程前までご存命だったそうです。

なかちゃん
なかちゃん

意外と最近の人なんですね

エリクソンは『心理社会的発達理論』という独自の“精神発達理論”を展開した人で(ちょっと難しい…)人間の心理的・社会的な発達を『8つの段階』からなる図として表しました。

それがこちら↓

この図の書き方や表現は色々ありますが、ここではなかちゃんノートから引用しました。「階段状になっているんだな」くらいのふわっとした感じで見てもらえれば大丈夫です。

人は生涯発達し続ける

図を見るとわかるように、人の『発達』は 生まれてから生涯に渡って段々と積み上がっていきます。各段階に書いてある言葉ですが、上段には『危機』、下段には『課題』となる言葉が書いてあります。

たとえば、乳児期(0~1歳)には “基本的信頼 基本的不信” とあります。これは 自分あるいは他者に対して基本的な信頼を獲得できるか それとも不信に陥るかということが『危機』となり、そんな状況を乗り越えて生きる『希望』を持つことが、この時期の発達の『課題』となっています。

赤ちゃんは母乳をもらい おむつを変えてもらわなければ生きられません。そしてまだ言葉も使えないため、泣くことでしか不快さを訴えることができません。それを察し、抱きしめ、サポートしてもらえるかどうかということが、この時期 そしてこの先も 生きていくうえでとても重要なことなのです。

つまり、

『養育者を信頼できるか・自分がここに存在していいか』=危機

『生きる希望を持つこと』=課題

ということになります。

アイデンティティとは

さて 本題の『アイデンティティ』はというと、思春期・青年期(13〜21歳)の段階にある “同一性” という言葉がそれに当たり『自我同一性』とも言います。

なかちゃん
なかちゃん

この時期は心理的にも社会的にも変化・移行していく時期ですね

この言葉の表現は様々ですが次のような意味になります。

『自分が自分(同一)であるという主体的な感覚』

『歴史/民族/社会的に認められた一個人の存在全体』

図には “同一性同一性混乱” と書いてありますが、“アイデンティティの確立と拡散” と言われることが多いかもしれません。これがこの発達段階の『危機』です。

この危機をくぐり抜けてプラス方向に傾けば 『忠誠』 という『課題』がクリアでき、それができなければ(マイナス方向に傾けば)課題は残り拡散に陥る…というわけです。

つまり『アイデンティティ』は、生まれてからそれまで積み上げてきた『自分』という存在を振り返り、自分自身を認め、それが 他者からも肯定的に受け入れられることで確立し、課題である『忠誠心』が芽生えます。

一方『自分』という存在を自分自身が否定したり、他者からも認められず否定的だった場合にはそれは確立できず 拡散(混乱)したまま次の段階に進んでしまいます。

なかちゃん
なかちゃん

「自分は何者なんだろう」
 と、考え始める頃です

この状態を “アイデンティティクライシス” と呼びますが、このクライシス(危機)を感じて『自分探しの旅』に出る人もいます。人が発達していくうえでとても自然で 健康的な成長だと言えるのではないでしょうか。

アイデンティティを確立するためには?

では『アイデンティティを確立』するためにはどうすればいいのでしょう。

それはまず “今ここ” に存在している自分を受け入れ、認めることです。

生まれ育った環境は人それぞれ

大家族の人もいれば父子家庭の人もいます。家族を知らずに育った人や戦時下で生まれた人も…

環境だけでなく文化・宗教・言語、また身体的な特徴や生物学的な性別と性自認が一致していない人などもいますが、これらの様々な要素が複雑に重なり合い『自分』という一個の人間が成り立っています。

アイデンティティを確立』するためには、たとえ他人からどのような評価を受けようと、自分自身がそれらを肯定的に受け止め、自分という存在を認めることに他なりません。

『天才バカボン』というアニメに出てくるバカボンのパパ。彼の口癖は、

「これでいいのだ!」

これ以上の自己受容はありませんね(笑)

みんなが自分自身を大切にできれば、その先には、他者をも理解し 受け入れられる 穏やかな未来 がきっとあるはずです。

心理学を子どもたちに

今回『アイデンティティ』について簡単に書いてきましたが、この危機は 多感な中学生の時期から始まります。そしてこれを確立するには長い時間がかかります。

だからこそ、なかちゃんも「心理学の基礎を 義務教育の教育課程に取り入れて欲しい」と願っているひとりです。同じ思いを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

近年は小学校でも「傾聴(けいちょう/相手の話を肯定的に聴く)」のカリキュラムを設けている学校もあるようですが、中学校でもロールプレイなどで親子の対話練習などができれば、クライシスに陥る子が減るのではないかなと。

もちろん『課題』の存在に気付かなくても生きていくことはできます。気付かない方が良い事も世の中にはありますので…

でも「あ、この年代になったからこんな危機が待っているな。じゃあ自分はどうすればこの課題をクリアできるかな」と “予め知っている” ならばどうでしょう。

この先に崖があることを知らずに歩くより、知っていてその崖を降りるロープを準備することができたほうが安心だし、何より準備できた自分に誇りを持てます。

『課題』を残して大人になった人もいるかもしれませんが、でも遅くないんです。今からでもクリアすることはできます。

まず大人が知ることが大切。そして未来ある子供たちが 知る機会を与えられ、自分を大切に生きていってくれることを願うばかりです。

なかちゃん
なかちゃん

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