転機とは?~捉え方と対処法~

春が近づくと、学校では卒業・入学、企業では人事発令による異動があったりと、環境が大きく変わる季節です。みなさんの身の回りはいかがですか?

今回はそんな人生における『転機』について、主にキャリアの視点から捉え方と対処法をお届けします。今まさに渦中にいる方や、今後訪れるであろう方にも参考になれば幸いです。

転機とは?

転機(トランジション)とは、今ある状態から別の状態に移るきっかけのことで、『人生の転機』や『事柄における転機』など、大きな変化により分岐点となるタイミングのことです。たとえば、進学や就職、転勤や異動、昇進や退職といったキャリアの変化はもちろん、結婚や離婚、自分自身や家族の病気なども、転機となる“ライフイベント”と言えます。
転機の捉え方は様々です。人の『発達論』的な視点もあれば、その人独自の『出来事』として捉える場合もあります。

転機の捉え方と対処法

少し専門的になりますが、キャリアの視点から転機の捉え方をいくつか挙げてみます。そしてそれぞれの対処法もあわせてみていきましょう。

3ステップモデル

ブリッジズ(Bridges,W.)というアメリカの心理学者が提唱したのが【3ステップモデル】です。

ブリッジズは、転機を『危機』として捉えました。そして転機とは、何かが始まる時ではなく、何かが終わる時であるとして、これを3ステップに分けて考えました。

ステップ1では、まず過去を受け入れ決別することが大切です。

ステップ2では、これから飛び込む新しい世界に向けて積極的に気持ちを向けることが重要になってきます。

この2つのステップを自分自身が納得して進んでいくことで、ステップ3に繋がっていきます。そのためにはじっくり自分と向き合い、傷付いた自分を癒やす時間も必要なのです。

4Sモデル

同じくアメリカの心理学者であるシュロスバーグ(Schlossberg,N.K.)という人は、まず転機を次の2つに分類しました。

たとえば、急に夫の転勤が決まって引っ越すことになったとしましょう。それは予期していなかったことが起きたということなので、“イベント”として捉えることが出来ます。また「次の部長は俺だな」と思っていたところ、想定通り部長に昇進した場合は予期していたことが起きたということで“イベント”として捉えられます。

逆に、「次の部長は俺だな」と思っていたのに、自分ではなく後輩が昇進してしまったという場合は、予期していたことが起きなかったということなので、“ノンイベント”ということになります。

シュロスバーグは、これらに対処する方法として、次の4つのリソース(資源)を点検し、強化する【4Sモデル】を提唱しました。

例として、急に母親が倒れて入院することになった中年男性の立場で考えてみます。この状況を4Sモデルに沿って点検してみましょう。

①状況

  • 入院は長期になる見込み
  • 母親は九州でひとり暮らし
  • 自分は長男

②自己

  • 自分は東京で働いている
  • 今は繁忙期で休めない

③支援

  • 九州に妹がいる
  • 民生委員と繋がっている

④戦略

  • まずは妹に初期対応をしてもらう
  • 民生委員に連絡する
  • 妻と相談し交代でサポートする

このように、一つひとつ点検してみると落ち着いて対処できるかもしれません。自分にはどんなリソースがどの程度あるのか、足りないのであればどれを強化していけばいいのか見えてくるでしょう。

キャリア・トランジション・モデル

ロンドンでビジネススクールの教授をしていたというニコルソン(Nicholson,N.)は、特に職業人としてのキャリアについてこの【キャリア・トランジション・モデル】を提唱しました。

第1段階: 準備
新しい世界に入る準備段階

第2段階: 遭遇
実際の職務でその状況に直面する段階

第3段階: 順応
徐々に仕事や人間関係などの状況に馴染み役職にも順応する段階

第4段階:安定化
職務にも慣れて落ち着いていく段階

ニコルソンは、この第1段階から第4段階のサイクルをぐるぐる回り、くり返すほど人は成長するとしました。

ふたたび例を挙げてみましょう。お堅い話が続いたので、ちょっと物語風にしてみます。

食品メーカーに勤める入社5年目の女性社員リナさん。営業部での営業事務から、企画開発部のマーケティングチームへ異動することになりました。

事前の準備として、マーケティングチームの業務内容やそこで求められるスキルなどを確認したところ、自分にはマーケティングに関する知識が不足していることがわかり、基礎知識習得のためオンライン講座を受講しました。
4月1日、マーケティングチームに配属され業務がスタートしました。講座で学んだ知識を活かせた場面もありましたが実務経験がないため、ミスからトラブルに遭遇し、先に配属されていた同期との差が浮き彫りになりました。「自分には向いていないんじゃないか…」と思いながらも少しずつ経験を積み、環境や職務にも次第に順応していきました。
1年経ったころ、プレゼンの資料を上司に褒めてもらえるようになり、また新人の指導を任されるまでに成長しました。リナさんはようやく自信をもって安定した業務ができるようになりました。

4段階のイメージはできましたか?この考え方は、仕事だけでなく他のライフイベントに当てはめて考えてみても良いと思います。

たとえば、好きな人ができたとしましょう。初めはその人がどんな人かを知るために、好みや苦手なことなどを色々質問してみます。その人の価値観に触れ、お互いに理解し合いながら一緒に行動することで馴染んでくると、関係性は落ち着いてくる…といったところでしょうか。馴染まなかった場合は、また新たな出会いを求め、このサイクルをくり返せばよいのです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は『転機』について、主にキャリアの視点から捉え方と対処法をいくつかお伝えしました。

転機とひと言に言っても、その人にとっては耐えがたい瞬間を迎えることもあるでしょう。大切な家族や友人を失った時は、心の傷が癒えるまでにはとても長い時間が必要になります。今生かされている自分は何をすべきか、これからの自分はどうあるべきかを考える作業に向き合わなければならないこともあります。
そんな時は、今回挙げた考え方を参考にしながら『文字』にして書き出してみてはいかがでしょう。『書く』という作業は、『頭の中にある思考を取り出して客観的に見る』ことに他なりません。「もうおしまいだ」と狭く主観的になりがちな状況も「本当におしまいなのか?まだ何か残っているかも?」と俯瞰しながら、冷静に見ることができるかもしれません。
ゆっくりで構わないと思います。焦らず自分と向き合った先に、薄っすら新しい道が見えてくるかもしれません。その道を、時には誰かの手を借りながら自分のペースで歩いていけばいいのです。

尚、以前のアイデンティティの投稿でもお話ししましたが、理論・考え方は様々あります。時代と共にまた新しい価値観も生まれてくることでしょう。今回取り上げたどれが正しいということではなく、自分自身がどう捉えるかということだと思います。

転機(トランジション)に直面したとき大切なのは、前向きに捉えるマインドを持つことです。
どんなにつらいことであっても、その意味をプラスに変換できれば「これも成長に必要な出来事だったんだ」ということがわかるでしょう。