自分を守るために~トラウマとPTSDを知る~

「忘れたいのに、あの出来事が頭から離れない」「何年も前のことなのに、ふと思い出して苦しくなる」…そんな経験はありませんか?

大きな事故や災害、暴力、いじめ、身近な人との死別など、心に強い衝撃を受ける出来事を経験すると、その後も心や体にさまざまな変化が起こることがあります。

周りからは「もう終わったこと」「気にしすぎ」と思われてしまうことがあっても、本人にとっては簡単に忘れられるものではありません。

まずは、トラウマPTSDについて正しく知ることから始めてみましょう。

トラウマとは?

「トラウマ(trauma)」とは、強い恐怖やショックを伴う出来事を経験したあとに残る、心の傷のことです。

事故や災害、犯罪、暴力、虐待、いじめ、病気や手術、身近な人との別れなど、原因となる出来事は人によってさまざまです。

また、同じ出来事を経験しても、心への影響は一人ひとり異なります。「この程度のことで傷つくのはおかしい」と、自分を責める必要はありません。

PTSDとは?

トラウマとなる出来事を経験したあと、しばらくの間、不安になったり、出来事を思い出してつらくなったりすることは珍しくありません。

多くの場合は、時間の経過とともに少しずつ落ち着いていきます。しかし、つらい記憶や恐怖が長く続き、日常生活に大きな影響が出ることがあります。

このような状態の一つが「PTSD(post-traumatic stress disorder/心的外傷後ストレス障害)」です。

突然その出来事を思い出したり、悪夢を見たり、似た場所や状況を避けたりすることがあります。また、常に緊張している、ちょっとした物音に驚く、眠れないなど、心だけでなく体にも症状が現れることがあります。

トラウマとPTSDの対処法

「忘れよう」と無理をしない

つらい経験をしたとき、「早く忘れなければ」「いつまでも引きずってはいけない」と思ってしまうことがあります。

でも、無理に忘れようとする必要はありません。つらい記憶が浮かんできたときは、「今、私は怖かった経験を思い出している」と気づき、まずは自分の状態を受け止めてみましょう。

深呼吸をしたり、温かい飲み物を飲んだり、安心できる場所でゆっくり過ごしたりすることも、自分を落ち着かせる方法の一つです。

「今は安全な場所にいる」と感じられる時間を大切にしましょう。

日常生活でできることをする

心の回復には、毎日の生活を整えることも大切です。できるだけ睡眠をとり、食事の習慣を整え、無理のない範囲で体を動かしましょう。

また、信頼できる家族や友人に話をすることも一つの方法です。ただし、話したくないときに無理に話す必要はありません。自分の気持ちやペースを大切にしましょう。

つらさをお酒などで紛らわせようとすると、かえって心身の状態が悪くなることもあります。できるだけ一人で抱え込まず、自分に合った方法で対処することが大切です。

専門家に相談する

症状が長く続いている、眠れない、外出することが怖い、仕事や家事に支障が出ているなど「一人ではつらい」と感じたら、専門家に相談してみましょう。

相談先としては、まず精神科や心療内科などの医療機関があります。PTSDが疑われる場合は、精神科や心療内科で相談することができます。医師が症状やこれまでの経験を確認し、必要に応じて治療や心理的な支援につなげてくれます。

また、公認心理師や臨床心理士などの心理職に相談する方法もあります。自分の気持ちを整理したり、つらい症状への対処方法を一緒に考えたりすることができます。カウンセリングを定期的に受けることで、徐々に症状が緩和することも期待できます。

「病院に行くほどなのかわからない」「いきなり医療機関に相談するのは少し抵抗がある」という場合には、精神保健福祉センターや保健所などの公的な相談窓口を利用する方法もあります。

厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」では、電話をかけた地域の公的な相談機関につながります。

また、厚生労働省では、電話だけでなくSNSやオンラインチャットなど、さまざまな相談窓口も紹介しています。「電話で話すのは苦手」という方も、自分に合った相談方法を探すことができます。

大切なのは、「もっと頑張れば何とかなる」と一人で抱え込まないことです。相談することは弱さではなく、自分を守るための大切な行動です。

こころの健康相談統一ダイヤル

 0570-064-556 

おこなおう まもろうよ こころ

(ナビダイヤル)

注)相談時間は地域によって異なります

身近な人ができること

家族や友人など、身近な人にトラウマやPTSDの症状がある場合は、「もう忘れたら?」「いつまで気にしているの?」と急かさないことが大切です。

まずは話を否定せずに聴き、「つらかったね」「話してくれてありがとう」と受け止めること。それだけでも大きな支えになります。

必要に応じて専門家への相談をすすめながらも、本人の気持ちやペースを尊重しましょう。

心の傷は、目には見えないから

心の傷は、外からは見えません。

そのため、本人が抱えているつらさに周囲が気づきにくいこともあります。

トラウマやPTSDは、「心が弱いから起こるもの」ではありません。強いストレスや恐怖を経験したことで、心や体がその出来事から自分を守ろうとしている状態ともいえます。

つらいと感じている自分も

自分の大切な一部

そう考えて、自分を責めるのではなく、必要なときには誰かの力を借りてみましょう。

焦らず、自分のペースで回復への道を探していくことが大切です。