これまでできていたことが、できなくなったら? ~「同行援護」から考える支え合い~

当たり前の日常とは?

朝起きて、時計を見る。
スマートフォンで天気を確認する。
スーパーで商品を選び、買い物をする。

今この記事をご覧になっているみなさんにとっては、当たり前の日常かもしれません。

ただ、これらのことは「目が見えている」という前提があってこその当たり前です。

では、もしある日、突然目が見えにくくなったり、見えなくなったりしたら、毎日の生活はどう変わるでしょうか?

駅の案内表示が読めない。
信号が青に変わったか分からない。
目の前に階段があっても気づけない。
スーパーでは商品の種類や値段が分からない。
書類に書かれた内容も確認できない。

ちょっとだけ想像してみてください。

目をつぶっただけでも怖くなりますね。これまで意識することなくできていたことが、大きな困難になるかもしれません。

「視覚障がい」の状態は人によって異なります。視野が一部残っている或いは狭くなっている方、光を感じにくい方、全く見えない方もいます。

大切なのは、見えないことで生活や行動にどのような影響が生じるのかを想像してみることです。

「見えない」と困ること

例えば、次のような場面で困難が生じます。

外出や移動

駅のホームや階段、道路の段差、工事中の場所など、周囲の状況を把握しにくくなります。初めて訪れる場所では、目的地までの道順を確認することも難しくなります。

買い物や食事

商品の種類や価格、賞味期限などの表示を読み取れないことがあります。レストランではメニューが読めず、テーブルに置かれた料理の位置や内容が分かりにくい場合もあります。

情報の確認や手続き

郵便物や書類、薬の表示、銀行や役所の手続きなど、文字や数字を確認する必要がある場面で支援が必要になることがあります。

人とのコミュニケーション

相手の表情や身ぶり、周囲の様子が見えないため、誰が話しているのか、どこに人がいるのか、何が起きているのかを把握することも難しいでしょう。

こうした困難は、本人の努力だけですべて解決できるものではありません。

一方で、白杖(はくじょう)や音声読み上げ機能付き機器、周囲の人の協力、公的な福祉サービスなどを活用することで、自分でできることを増やしていくことができます。

「同行援護」とは?

「視覚障がい」のある方の外出を支える福祉サービスの一つに「同行援護(どうこうえんご)」があります。

同行援護は、視覚障がいによって移動が著しく困難な方が外出するときに、支援者が同行し、安全に移動するための情報提供や必要な援助を行う、障害福祉サービスです。

単に目的地まで一緒に歩くことだけが役割ではありません。

例えば、次のような支援をします。

  • 移動の支援
    道路の段差や障害物、階段、信号の状況などを伝え、安全な移動を支える
  • 周囲の情報提供
    周囲の状況や案内表示など、移動や外出に必要な情報を伝える
  • 代読・代筆
    必要に応じて書類やメニューなどを読み上げたり、文字を書くことを支援したりする
  • 外出先での支援
    食事や排せつなど、外出時に必要な援助を行う

例えば、一人では不安があって出かけにくかった病院への通院や買い物、公共施設への外出なども、必要な支援を受けながら行える可能性があります。

同行援護は、本人の代わりに何でも決めるサービスではありません。本人の意思を尊重しながら、外出や社会参加を支えることが大切です。

利用には対象要件があり、お住まいの市区町村への申請が必要です。利用者負担も所得などに応じて定められています。

詳しくは、厚生労働省の「障害福祉サービスの内容」や、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で確認できます。

生活を支える公的な制度

「視覚障がい」の方の日常生活や、情報収集を支える公的な制度があります。

補装具費の支給

対象要件を満たす方は、白杖などの視覚障がいに関する補装具について、購入や修理にかかる費用の支給を受けられる場合があります。

日常生活用具給付等事業

市区町村が実施する制度で、対象要件や自治体の取扱いに応じて、情報を得るための機器など、日常生活を支える用具の給付・貸与を受けられる場合があります。

相談窓口の活用

市区町村の障害福祉担当窓口や、地域の障害者相談支援機関などでは、利用できる福祉サービスや生活上の困りごとについて相談できます。

制度の対象や給付内容、自己負担などは個々の状況や自治体によって異なります。まずは窓口で、その人に合った支援を確認することが大切です。

参考:厚生労働省ホームページ
「障害福祉サービスの内容」
「日常生活用具給付等事業の概要」

視覚障がいのある方を見かけたら

街中で白杖を持った方や、移動に困っているように見える方に出会ったとき、どうすればよいか迷うことがあるかもしれません。

大切なのは、相手の意思を確認し、必要な支援を一緒に考えることです。

  • まずは声をかける
    「何かお手伝いしましょうか?」と尋ね、本人の希望を確認する
  • 勝手に身体や白杖をつかまない
    突然引っ張ったり、腕をつかんだりせず、本人の指示に従う
  • 具体的に状況を伝える
    「前に段差があります」「右側に(上り/下り)階段があります」など、方向や状況を言葉で伝える
  • 案内するときは、本人の希望を聞く
    必要に応じて、支援者の腕や肩につかまってもらうなど、本人が安心できる方法を確認する
  • その場を離れるときも声をかける
    黙って立ち去らず「ここで失礼しますね」と伝える

また、白杖を持っているからといって、必ずしも全く見えないとは限りません。全盲の方は、視覚障がい者全体の1割ほどです。

「障がいがあるから助けなければ」と決めつけるのではなく、一人の人として接し、必要なときに自然に声をかけられることが大切です。

できるようになる方法を考える

私たちは、健康で、自由に動けて、必要な情報を自分で確認できることを、つい当たり前だと思ってしまいます。

しかし病気や事故、加齢などによって、これまでできていたことが難しくなる可能性は誰にでもあります。

視覚障がいのある方の生活を知ることは、特定の誰かのためだけではなく、これからの自分自身や家族の暮らしを考えるきっかけにもなります。

そして困難が生じたとき、本人の努力だけに頼るのではなく、利用できる制度を知り、周囲が必要な配慮をすることで生活の可能性は広がっていきます。

「できなくなったから、もう無理」ではなく、「どうすれば、またできるようになるだろう?」

そんな視点を持つことが、誰もが暮らしやすい社会につながるのではないでしょうか。

「同行援護」について興味を持たれた方、ご相談希望の方は「しゃべりば」をご利用ください。